【初版280万部】鬼滅の刃のヒットから紙媒体の存在意義を考える

ヒット続く『鬼滅の刃』累計6000万部突破、1年で12倍 最新20巻は初版280万部

人気漫画『鬼滅の刃』(集英社)が、13日発売のコミックス第20巻をもってシリーズ累計発行部数が6000万部(電子版含む)を突破することが7日、発表された。初版は280万部。シリーズ累計は今年2月時点で4000万部、昨年5月時点で500万部だったため、3ヶ月で1.5倍、1年で12倍と驚異的なペースで売り伸ばしており、勢いが止まらない。

—–中略—–

同作は、大正時代の人喰い鬼の棲む世界が舞台。炭売りの少年・炭治郎は、人喰い鬼に家族を惨殺されたことで一変し、唯一生き残ったが鬼になってしまった妹の禰豆子を人間に戻すため、家族を殺した鬼を討つために旅をするストーリー。現在、連載誌ではクライマックスを迎えようとしている。

■『鬼滅の刃』最近の累計発行部数の流れ(集英社発表)
19年4月6日:350万部(テレビアニメ放送時)※4月9日発売巻で500万部
19年9月末:1200万部(テレビアニメ終了時)
19年12月4日:2500万部
20年2月4日:4000万部
20年5月13日:6000万部

引用元:https://news.livedoor.com/article/detail/18224044/

漫画って実際、どのくらい売れるの?

週刊少年ジャンプの歴代作品の中で、実際にヒットした作品を見ていきますと…

初版発行部数歴代ランキング

1位 ワンピース(405万部)/ 尾田 栄一郎
2位 鬼滅の刃(280万部) / 吾峠 呼世晴
3位 スラムダンク(250万部)/ 井上 雄彦
4位 ドラゴンボール(220万部)/ 鳥山 明
5位 Dr.スランプ(220万部)/ 鳥山 明

やはりワンピースの人気は際立っていますよね。また、4位と5位に鳥山作品が2作ランクインしているのも興味深いところです。

年間売上歴代ランキング

1位 鬼滅の刃 (2020年・4200万部) / 吾峠 呼世晴
2位 ワンピース(2011年・3800万部)/ 尾田 栄一郎
3位 ワンピース(2010年・3200万部)/ 尾田 栄一郎
4位 ワンピース(2012年・2300万部)/ 尾田 栄一郎
5位 ワンピース(2013年・1800万部)/ 尾田 栄一郎

ここでも圧倒的にワンピースの人気ぶりが光ってますね。ちなみにワンピースは2位~8位、10位にランクしております。なお、9位には鬼滅の刃(2019年・1200万部)がランクインしています。

歴代累計発行部数ランキング

1位 ワンピース(4億7,000万部)/ 尾田 栄一郎
2位 -NARUTO- (2億5,000万部)  / 岸本 斉史
3位 ドラゴンボール(2億5,000万部)/ 鳥山 明
4位 スラムダンク(1億5,700万部) / 井上 雄彦
5位 こちら葛飾区亀有公園前派出所(1億5,650万部) / 秋元 治

やはりここでも、ワンピースが圧倒的な存在感を見せていますね。

作品によって異なる「ヒット要因」

こち亀やドラゴンボール。そしてスラムダンク等がヒットした時期はパソコンはもちろんのこと、携帯電話(ガラケー)も十分に普及していなかった時期でした。しかし、この時期はいわゆる「ジャンプ黄金期」であり、週刊少年ジャンプに最も勢いがあった頃の人気作品です。

連載作品そのものに加え、漫画雑誌の「ブランド」が作品の人気を支えたといえるでしょう。一方、にワンピースの連載は1997年。-NARUTO-の連載は1999年で、いずれもジャンプ黄金期以降の作品です。

ただ、これらの作品が「看板作品」として人気を確立し始めた時期に合わせ、インターネット人口が非常に増えたため、漫画雑誌よりも作品自体の評価がされ始めるようになった時期でもありました。また、IT技術の飛躍的な進歩により、ゲームやアニメのクオリティが一気に高まったのも人気を後押ししたといえるのではないでしょうか。

他の雑誌の作品と比較すると…

ドラえもん

藤子・F・ 不二雄により1969~1996年まで連載。コロコロコミック、てれびくん等、子供向けの漫画雑誌を中心に連載されました。作品は全45巻ですが、最初は0巻として発行されているため、実際には全46巻となっております。発行部数は1億部。アニメや映画で根強い人気を誇っており、またアジア地域を中心に海外での非常に人気が高い事で知られています。

クレヨンしんちゃん

1990年、臼井儀人により漫画アクションで連載開始。その後、掲載誌をまんがタウンに変更。2009年に作者が急死し、その後はスタッフによって「新クレヨンしんちゃん」として連載が再開されました。作者のオリジナルによる「旧シリーズ」は50巻。スタッフによる「新シリーズ」は9巻が発売されており、累計販売数は約5,000万部となっております。

前述のドラえもんと同様、映画やアニメの人気が非常に高いのが特徴です。

GTO

藤沢とおるにより週刊少年マガジンで1996年12月に連載開始。連載期間は2002年1月までの約5年間。全25巻と少ないものの、5,000万部の売上を記録。

同程度の売り上げを上げた作品。あるいは1億部を突破したヒット作の中には100巻を超える長期連載も少なくありません。この場合、1冊あたり100万部売れたことになります。これに対し、本作は25巻で5,000万部となりますので、1冊あたり200万部売れたということになります。1冊辺りの売上としてはトップクラスの人気作品といえるでしょう。

課長島耕作シリーズ

弘兼憲史によりモーニングで1983年に連載が開始されて以降、「部長」「取締役」…と作品内で順調に出世し、2019年は相談役にまで上り詰めています。また、スピンオフ作品も多く存在し(ヤング島耕作、係長島耕作等)、累計発行部数は約4,000万部となっております。子ども向けの作品と異なり、登場人物の名言集等がビジネス書で多く出版されており、映像作品よりも別の紙媒体(ビジネス書)で人気が高いのが特徴です。

また子供向けの作品。あるいは短期間の連載と異なり、話数の経過とともに登場人物が「年をとる」ため、時代によって周囲の環境が違和感なく変わるのが特徴です。例えば1巻ではオフィスにパソコンがなく、電話もダイヤル式の電話(黒電話)ですが、連載が新しくなるにつれて作中にパソコン、スマホ等が登場しています。

ゴルゴ13

1968年より、さいとう・たかをによりビッグコミックに連載。2020年現在まで累計196巻が発売。時事ネタ(国際政治、戦争等)をモチーフにした作品内容です。累計発行部数は現在までに2億8,000万部となっており、1巻辺りの発行部数も140万部。主にビジネスマンを中心に高い人気を誇っています。

また全国の理髪店に多く置かれている作品として有名で、床屋で散髪を待つ間、本作に目を通した方も多いのではないでしょうか?ちなみに、主人公は年をとりませんが、周囲を取り巻く状況は連載開始当初の冷戦時代~IT革命後のサイバー戦争に至るまで目まぐるしく変化を遂げており、様々な立場の人間が主人公に接触を試みるというのが特徴です。

紙媒体は生き残るか?

バブルの崩壊により、不況が深刻化した1990年代の後半以降、そしてインターネットの普及が本格化した2000年後半以降、いわゆる「出版不況」という言葉が多く聞かれるようになりました。しかし、そのような時期に連載が開始され、そして現在まで継続されている作品の多くが現在も人気作品として多くの人に読まれています。

また、2011年の東日本大震災は電気やガス、水道といった「生活インフラ」が危機的な状況となりました。そのため特に電気を必要とするパソコンや通信機器(ガラケー、スマホ等)は充電が出来ない事により、使用そのものが出来なくなるという事態に直面した方も多かったのではないでしょうか?

さらには災害で電子機器が故障することにより、データ毎破損するといった事故も多く発生しています。そんな中、電力を必要としない紙媒体の存在価値があらためて注目されていたのは非常に印象深いものでした。

 

現在はスマホの性能が日々向上し、それに伴い電子書籍の市場が飛躍的に成長しております。通常のビジネス書や漫画であっても紙媒体の書籍を購入せず、電子書籍だけで済ませてしまうという方も多いのではないでしょうか?

しかし前述のとおり、電力を必要としない紙媒体には電子媒体にはない「便利さ」が存在します。また、本屋というものも、かつては「本を売る場所」というものから「本を試し読みする場所」「本を楽しむ場所」という、いわば「ブックカフェ」というコンセプトを持った書店が多く誕生しています。

今回の鬼滅の刃のヒットは、まだまだ紙媒体の存在意義が健在であるということを示したのではないでしょうか。だとすれば単に発行部数が減った事をもって「出版不況だ」「印刷工場は倒産するしかない」とマイナスで考えるのではなく、今後の可能性、もっといえば成長性に大いに注目していきたいですよね。

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